| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-092
細胞膜に存在する水チャネルであるアクアポリンの中には、細胞膜の二酸化炭素透過性を促進することにより葉の内部の二酸化炭素拡散抵抗を減少させ、光合成速度の増加に寄与するものがある (Hanba et al. 2004、Katsuhara et al. 2008、Flexas et al. 2006、2007)。アクアポリンのタンパク量は内部拡散抵抗だけでなく気孔抵抗とも連動していることが多く、植物の水利用効率や生産性に関与する可能性があるが、現在のところ十分な検証が行なわれていない。発表では主にユーカリ Eucalyptus camaldulensisついて、アクアポリンと水利用効率、生産性との関係について報告する。ユーカリにおいてダイコンのアクアポリンPIP2;1による形質転換を行ない、母樹からの挿し木増殖個体を温室内で栽培して水利用効率、生産性との関係を検証した。その結果、潅水ストレスをかけた場合、PIP2;1形質転換体の一部の個体で水利用効率が高く、かつ生体重量も高いものがみられた。さらに、PIP2;1タンパク量が顕著に増加した一部の個体については、光合成速度の増加、水利用効率の増加、および生長量の増加が得られた。このことは、ユーカリにおいて過剰発現したアクアポリンPIP2;1が水利用効率の向上と生産性の増加という有利な性質の獲得に寄与したことを示唆している。発表では、アクアポリンが水利用効率や生産性に影響を与える機構について考察する予定である。