| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-094
根の呼吸は通常、温度と強い相関を示すことが広く知られている。近年演者らは、根が樹木本体につながった状態だと、日中に温度が一定または上昇しているにもかかわらず、根の呼吸速度が一時的に低下する現象(日中低下)を見いだし、2006, 2007, 2008年の日本生態学会全国大会において報告をおこなってきた。特に2008年大会では、ヒノキとミズナラの林冠木の個葉光合成と根の呼吸を同時測定した結果から、根の呼吸速度が1時間前の蒸散速度と相関を持つことを示し、根の呼吸速度が葉の蒸散速度に影響を受けている可能性を指摘した。しかし、野外に生育する植物の蒸散速度は飽差や光強度など環境条件に強い影響を受け、さらに気孔コンダクタンスや光合成速度とも相互に影響しあいながら変化するため、上記の野外観測結果から、根の呼吸の日中低下が蒸散速度の変化によって完全に説明できるのか不明であった。
そこで、蒸散速度が根の呼吸速度に影響を与えるのか実験的に検証するため2007年と2008年にミズナラとヒノキの稚樹を用いた操作実験を行い、根の呼吸速度の日中低下をもたらす要因を明らかにすることを目指した。2007年には、野外で葉の光環境を操作し光合成速度や蒸散速度を変化させながら根の呼吸速度の変化を観測した。さらに、2008年には人工気象室内で、大気の二酸化炭素濃度や湿度、温度、および光強度を制御し、光合成速度、蒸散速度、気孔コンダクタンスを独立に変化させながら根の呼吸速度の変化を観測した。これらの実験結果から光合成速度や気孔コンダクタンスではなく、蒸散速度の変化が根の呼吸速度に影響を与えていることが明らかになったのでその報告をおこなう。