| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-103
2007年10月に白山の登山道の一つである砂防新道でオオシラビソが落葉しているのが観察された.現地調査の結果,完全に枯死している個体や個体の上部全体が枯れている個体よりも当年枝の葉のみが残り,それ以外の葉が落葉している個体が多いことが確認された.異常落葉は標高約1,800〜1,900mにかけて広範囲で確認され,樹高約3m以上の高木でよく見られ,低木(おおむね樹高約3m以下)では少なかった.また,高木でも異常落葉しているのは,幹の上部のみで下部では異常が見られなかった.
異常落葉した個体が砂防新道と平行している別当谷対岸の観光新道でも確認されたこと,砂防新道では旧登山道でも新規に開設されたう回路でも確認されたことから,異常落葉の原因として2006年に発生した砂防新道近くの別当谷山腹崩壊に伴う影響や登山道のう回路設置に伴う影響が原因とは考えられなかった.また,2007年の夏の降水量や気温についての分析からこれらの影響も否定された.異常落葉が確認された場所でのデータはないが,白山麓での2006〜07年にかけての積雪量が平年と比較して特に少なかったことから当該地域での積雪量も少なかったと思われ,通常の冬では雪面下にある部分が,少雪のため雪面上に出てしまい,低温や強風といった気象害によるストレスを受けたため異常落葉が起ったのではないかと推察された.
また,2008年夏に同地点を再調査したところ,2007年のような状況は確認されず,また,完全に枯死している個体の大幅な増加は確認されなかった.
地球温暖化により積雪環境がどのように変化するかについてはまだ,はっきりとはしていないが,積雪量が減少するならば,今後,白山の他地域のほか,全国各地でも同様な異常落葉が起きる可能性があり,それが単年度ではなく,連続して起きるようならばオオシラビソの大量枯死が起きる可能性も考えられる.