| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-104
冠水した樹木の幹では時に著しい肥大成長の促進が認められ、それには樹皮の肥厚、細胞間隙の増加、通気組織の発達、木部細胞径の増加、細胞分裂の促進による細胞数の増加などが寄与している。ヌマスギ(T. distichum)は高い冠水耐性を持ち、冠水条件下では盤根状に発達した幹と膝根を形成する。本実験では3年生ヌマスギ実生ポット苗を用いて2つの冠水実験を行い、幹部の肥大成長促進と変動する水位との関連性について調べた。長期の冠水実験は冠水深度を50cmと120cmの二段階に設定し、ポット苗をおよそ10年冠水させた。短期の冠水実験では冠水深度を5cmと25cmに設定し、(1)5cm冠水の後、25cm冠水、(2)終始5cm冠水、(3)25cm冠水の後、5cm冠水、(4)終始25cm冠水、(5)非冠水(対照区)の5処理区を設定し、2ヶ月間実験を行った。長期の冠水は50cmおよび120m冠水のいずれの処理区においても、冠水水位よりも下方での肥大成長が促進されていた。一方、120cm冠水区で50cm冠水区と比べて伸長成長が抑制されていた。短期の冠水実験では、処理区間における伸長成長およびバイオマスの有意な差は認められなかったが、2ヶ月間同じ水位で冠水した処理による水際部の肥大成長促進が認められた。水位を変化させることで、肥大促進がおこる部位も変化する傾向が認められたが、有意な差ではなかった。肥大成長の促進された部位では、仮道管径の増加と細胞壁の薄化が認められた。本研究発表ではこれら組織構造学的特徴の変化と冠水水位からの距離との関連性についても考察する。