| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-177
沈水植物は、他の生物へ生息環境を提供するなど、種多様性の増加に寄与していると同時に、様々なメカニズムで、水を透明な状態に保つ重要な役割を果たしている。釧路湿原に位置するシラルトロ湖では、多様な沈水植物が確認されていたが、水質の悪化等、生育環境の変化が急速に進行し、種数の減少が報告されている。加えて、近年、ヒシ群落が拡大しており、沈水植物への影響が懸念される。
本研究では、同湖の沈水植物を保全することを目的とし、ヒシの生育に伴う沈水植物種の応答を明らかにするため、ヒシの生育初期と最盛期に、沈水植物優占種の各現存量の、ヒシの有無による違いを比較した。
調査は、2008年6月と8月に、湖内に設けた45地点で、潜水によるコドラート法で沈水植物とヒシを採取した。沈水植物の優占種は、センニンモ、エゾヤナギモ、ホザキノフサモ、クロモ、マツモ、ホソバミズヒキモの6種だった。面積あたりの平均現存量は、6月と8月とで、沈水植物全体では約2倍に、ヒシは約6倍に増加した。
結果は、8月のマツモを除いた5種で、沈水植物の現存量を説明する変数としてヒシの有無が選ばれた。ホザキノフサモとセンニンモは、6月・8月ともヒシのない地点で現存量が多かったが、ホソバミズヒキモは両月ともヒシのある地点で現存量が高かった。エゾヤナギモは、6月はヒシのある地点で、8月はない地点で現存量が高かった。一方クロモは、6月はヒシのない地点で、8月はある地点で現存量が高かった。マツモは、6月はヒシのない地点で現存量が多かった。
以上から、沈水植物は、種によりヒシに対する応答に違いがあることが明らかになった。ヒシと負の関係にあった種のうち、8月になって負へと転じたエゾヤナギモは、ヒシの繁茂が続く場合、減少する可能性が示唆された。