| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-179

水位変動はため池の水生植物相の発達にどう影響するか?-埋土種子発芽実験から-

*樋口伸介(神戸大・自然科学研究科), 角野康郎(神戸大・理学研究科)

様々な湿地の中でも、降雨や氾濫などによって一時的に形成される湿地(temporary wetland)は、他の湿地に比較して多様なあるいは特徴的な動植物が集中して分布することが知られている。日本国内に多く分布するため池も季節的な水位変動が生ずる一時的湿地である。しかし、ため池の水位変動は構造や利水・管理状況によって大きく異なり、それが植生の発達・維持にどの様に作用しているのかという明確な実証データはほとんど得られていない。さらに、今後離農や管理の粗放化によってため池の水利用形態が急激に変化する恐れがあり、その場合に水生植物相が受ける影響についても検討する必要がある。そこで本研究では、異なった水位変動状況下で植物相はどの様に発達するのかを明らかにするために、圃場における栽培条件下で発芽実験を行った。

本研究では、兵庫県東播磨地域において、隣接しながらも植生および水位変動条件の異なる4つのため池から採取した土壌を使用し、水深、水位変動、干出の時期と期間の異なる9つの条件下の水槽で発芽実験を行った。実験は5月下旬から11月上旬にかけて行った。実験の結果、湿潤条件と湛水条件で発達する植生が大きく異なり、スブタやサワトウガラシ、シロイヌノヒゲ、ツクシクロイヌノヒゲは、バイオマスに関わらず水位低下時に開花・結実し、干出の期間が長い場合に開花・結実数が増加した。対して車軸藻類はいずれの条件下でも卵胞子を形成した。

以上の結果から、水位変動や干出の期間は、水生植物相の開花・結実など再生産に強く影響を及ぼしており、種子寿命や休眠タイプにもよるが、特に小型の一年草草本群落の存続に強く影響を及ぼすものと推察された。


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