| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-181
近年の多摩川における問題として,河原固有の植物が衰退している一方でクズ・アレチウリなどの繁殖力旺盛なつる植物が河川敷へ侵入・優占してきている事が挙げられる.洪水による撹乱後においてもこれらのつる植物は依然生息しており,特にアレチウリは洪水により倒伏した植物に覆いかぶさり繁茂するなど,洪水の影響を受けてもなお侵入・優占を進めている.このような背景のもと,本研究では調査対象をクズ・アレチウリとし,多摩川中流域の根川合流点付近・府中四谷付近・大栗川合流点付近を調査地として,調査・分析を行った.
両植物の生息できる土壌条件の検証を目的として,各地点において2008年5月から12月まで数回に渡る植生調査と土砂・植物サンプルの採取を行い,土砂の含水率・粒径・栄養塩と植物の各部位の大きさ・バイオマス・栄養塩の計測をし,時間的な変化の観察と両植物における比較・検証を行った.その結果,両植物共に細粒土であり土壌中に含まれる窒素分が大きいほど生長しやすいこと,またアレチウリと比較してクズはある程度の粗粒分が含まれ窒素分の少ない土壌においても,空気中の窒素固定を行う根粒菌から窒素分の供給を得ることで繁茂していることがわかった.また,洪水による撹乱に対する強度の検証を目的として,両植物の茎径に対する引張り強度・根から単位長ごとに区切っての茎径と湿潤重量の比較を行った.その結果,クズはアレチウリに比べ茎の強度が高いことがわかり,またアレチウリはクズに比べ全体的に茎径が細く,湿潤重量が軽いことからアレチウリの他の植物への覆い被さりやすさを計ることができ,両植物の撹乱に対する強度の高さを計る一助となった.