| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-182
生態学的に持続可能な天然林施業を実現するうえでは,択伐など,部分的伐採法の再評価が欠かせない.従来の択伐施業では,持続的な管理が実現したケースは多くなかったと見積もられるが,そこで得られた経験やデータをもとに,代替的な伐採方法を考えることは重要である.そこで本研究では,北海道北部の天然生針広混交林を対象に,伐採施業下における森林の変化を予測しうる動態シミュレーションモデルを構築することを目的とした.モデルの基礎としては,北米で開発された空間明示的な個体ベースモデルSORTIE/NDを使用した.このモデルは光環境の推定をもとに,経験的に得られた各種の動態パラメータとの関係を組み込んで作動するが,適用する生態的プロセス(伐採や植林を含む)の選択や順位付けが可変的で,北海道の森林にも適用が可能である.
北海道北部に生育している主要な樹種について,北海道大学雨龍研究林,中川研究林で得られたデータから,樹種ごとにアロメトリー関係,成長率,死亡率,種子散布等に関するパラメータを推定した.この地域の森林を特徴づけるササの存在については,林床における光の減衰や,稚樹の高い死亡率を仮定して組み込んだ.パラメータ推定終了後,シミュレーション結果を,北海道大学中川研究林の無伐採林(面積約2ha)における25年間のデータと比較した.今後,適合度を改善するため,仮定する生態的プロセスの再検討やパラメータの再推定が必要であるが,本報告では,現時点における,代替的な伐採方法についてのシミュレーション結果を紹介する.