| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-186
茨城県常総市の菅生沼畔には,オギを優占種とする湿地性の二次草原が広がっており,絶滅危惧種タチスミレの生育地保全を目的とした火入れが行われている。
本研究は,火入れがタチスミレの個体数に与える影響を明らかにすることを目的とし,火入れを継続する区画(火入区)と火入れを行わない区画(中断区)の2実験区を設け2007年から2008年にタチスミレ個体数(実生,越冬生個体),タチスミレの越冬生個体の体サイズ(個体の直径),の測定と植生調査を行った。タチスミレの調査は各実験区内には50×50cmのコドラートを32設置し行った。この調査では2007年5月は火入区の16コドラートと焼残区の20コドラート,2008年5月は両区とも32コドラートで行った。また2007年には,環境条件として相対光量子密度,地表面温度の測定を行った。
タチスミレの実生個体数は,2007年,2008年ともに火入区のほうが中断区に比べて多く,両者の差は有意であった(U検定)。また火入区では2007年に比べ2008年は実生個体数が有意に増加したのに対し,中断区では2007年と2008年の実生個体数に変化は見られなかった(ウィルコクソン検定)。
タチスミレの越冬生個体数は2007年,2008年ともに火入区のほうが中断区に比べて多く,両者の差は有意であった(U検定)。また火入区では2007年と2008年の越冬生個体数に変化は見られなかったが,中断区では2007年に比べ2008年は越冬生個体数が有意に減少した(ウィルコクソン検定)。
これらのことから火入れがタチスミレの実生個体数の増加に効果的であることが示唆された。