| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-190
近年、アカスジカスミカメ(以下アカスジ)による斑点米被害が全国的に急増している。アカスジは主に水田外に生息し、イネの出穂前後という限られた時期に水田へ侵入することが知られているが、侵入時期の変動が大きいことから、水田内への薬剤散布という一時的な防除でアカスジに対処するには限界がある。アカスジの被害を抑えるためには水田内だけでなく、その発生源自体を管理する必要があると考えられる。アカスジは近年増加している転作牧草地やイネ科雑草が優占する休耕地に生息することから、それらが重要な発生源と考えられているが、どのような特徴を持つ転作地・休耕地が生息場所として重要かはよくわかっていない。転作地・休耕地は水田ランドスケープにおいてパッチ状に分布しており、その空間構造がアカスジの個体群維持に影響している可能性もある。
本研究では転作地・休耕地におけるアカスジの密度が局所レベル及びランドスケープレベルの要因から受ける影響を明らかにするため、宮城県大崎市田尻において、アカスジのすくい取り調査と植生調査を行った。イネの出穂直前である8月上旬における194の転作地・休耕田での調査の結果、アカスジの個体密度が圧倒的に高いのは外来牧草ネズミムギの群落であることが示された。さらに、ネズミムギ群落のアカスジ密度は、ネズミムギの穂の局所密度と周辺のネズミムギ群落面積のそれぞれから正の影響を受けていることが示された。この結果はネズミムギ群落の連続性がアカスジ密度に寄与しており、アカスジがネズミムギ群落を生息場所パッチとするメタ個体群を形成している可能性を示唆する。これを踏まえ、ネズミムギ群落を減少もしくは分断化させるような管理により、アカスジ密度を低下させるという対策の有効性についても論じる。