| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-192

難分解性有機汚染物質の濃縮パターン解析-水か食べ物か?-

*瀬戸繭美(愛媛大学沿環研センター), 豊島沙織(愛媛大学沿環研センター), 磯部友彦(愛媛大学沿環研センター), 高橋真(愛媛大学沿環研センター)

残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)は自然に分解されにくいため環境中での残留性が高く、疎水性であるため生物の脂質に蓄積されやすい。このため、食物連鎖を介して高次栄養段階の生物に生物濃縮されていく傾向があり、生態系の上位捕食者に毒性を発現することによって生態系全体に影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、各生物中のPOPs濃度は栄養段階が高くなるにつれて必ずしも一様に上昇していくわけではない。なぜなら、表面積の大きさ、エラの有無、腸管による吸収率などの生理学的な特徴による種差により、生物濃縮をしやすい生物種としにくい生物種が存在するためである。これらの生理学的特徴を生態系に存在する全ての種について把握することは難しい。

そこで、体表面における海水との交換が大きく、濃縮性が低いプランクトン類(< 2mm)のPOPs濃度で他の海洋生物種のPOPs濃度を規格化した値を濃縮指標(plankton-normalized POPs concentration: pBAF)として用い、低濃縮性生物と高濃縮性生物を統計学的に選別する手法を開発した。2004年4月に相模湾で採取された24種類の魚類と8種類の甲殻類について測定されたPCBs, PBDEs, HBCDs濃度データを対象とし、本手法を適用したところ、高濃縮性生物群において栄養段階と各物質の濃度との間に高い相関が得られた。また、同生物群においては体長と各物質の濃度との間に更に高い相関が確認された。これは、体長が大きい生物ほど体積に対する表面積が小さく、水との交換による希釈効果が働きにくいため、生物濃縮を起こしやすい傾向にあることを意味する。


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