| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-199
ダム湖内でのヤナギ林の形態的特性を把握するために、福島県の三春ダムで調査を行った。ダム湖内ではタチヤナギSalix subfragilisが優先して生育していた。また三春ダムは治水目的で、冬季は夏季に比べ、水位が約8m高くなる。
調査内容はダム湖内の牛縊(5地点)、蛇石前(4地点)、蛇沢(3地点)の3つの前貯水池の付近に10m四方のコドラートを計14地点設置し、コドラート内のすべての樹木の樹高、胸高直径の測定、コドラート内の土砂やリターの栄養塩類や含水率、粒径の測定とした。また、各調査地点の樹木の特徴を把握するために、各地点で樹木を伐採し、樹高、胸高直径、地上部バイオマス、地下部バイオマスの関係を求めた。
設置したコドラートのうち13地点は樹齢が約10年であった。これら13地点の樹木密度は1.16±1.19本/平方メートルであり、最小は0.14本/平方メートル、最大は3.60本/平方メートルであった。また、胸高部の枝の本数による胸高部樹木密度は2.87±2.79本/平方メートルとなり、最小は0.68本/平方メートル、最大は10.02本/平方メートルとなった。さらに、DBHは6.61±3.22cmとなり、最小は2.85cm、最大は13.76cmであった。
以上のように、ダム湖内の樹木は地点毎に樹木密度や枝の数などで、樹齢に関係なく様々な形態をしている。これらに影響を与えている要因の一つとして冬季の冠水時の水深の影響が考えられる。地点毎に冠水時の水深(y)と樹木密度(x)をプロットした結果では牛縊y=-11.98x+6.51(R^2=0.89,n=4)、蛇石前y=-0.70x+4.56(R^2=0.92,n=5)、蛇沢y=-0.34x+5.67(R^2=0.91,n=4) となり、冠水時の水深と樹木密度の間に相関関係が見られた。