| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-206
奈良県大台ヶ原におけるニホンジカの生息数指標として、これまで主に区画法と糞法の検討が行われてきた。区画法は調査時点での調査範囲内の全数を把握できるが、多数の調査員を必要とする。一方、糞法は糞の分解消失速度の大きい夏には適さない。したがって、実生採食や樹皮剥ぎなどシカによる植物への影響が大きい夏も含めて季節変化を追跡でき、蓄積的な影響も評価できるような、簡便かつ低コストな指標が求められている。大台ヶ原では下層植生の衰退により見通しがよく、容易にシカを目視できることから、固定ルートの巡視を反復して得た群れカウント・データから、ある地点のシカによる利用度の評価を試みた。群れカウントは、2007年4月から12月までの概ね各月3回、東大台・西大台の周回遊歩道(延長7.2kmと8.1km)において、シカの採食時間帯に該当し、観光客の影響が比較的小さく、軽装備で臨める日没前約2.5時間に行った。これによる目視個体の位置と数を用いて、実生生存(伊東ほかPB1-253参照)とササ刈り取り調査を行った4地点を中心とした半径r (m) 内の目視数を抽出した。地点ごとに、調査日に対する目視数から平滑化曲線を求めて任意の日あたり目視数を推定できるようにし、任意の期間中の目視数の総和をその期間中の累積利用度の指標と考えた。抽出半径を変えたときの目視数の変化、ササ刈り取り調査から得られたササ消失量の変化などから、この指標の妥当性を検討する。