| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-207

ヒノキ人工林の強度な間伐がノウサギの生息密度に及ぼす効果

佐藤重穂,野口麻穂子,奥田史郎,奥村栄朗(森林総研四国)

近年、国内の人工林において、きわめて強度な間伐が実施されるようになっているが、これが人工林生態系にどのような影響するか、詳しく検討されていない。人工林における生物多様性保全策の一つとして、列状間伐を実施して、森林生態系の代表的なアンブレラ種である猛禽類に採餌空間を供給し、主要な餌動物であるノウサギの密度を増加させることが提言されている。しかし、間伐に対する猛禽類や餌動物の反応は一定ではなく、立地条件や植栽樹種、間伐方法などによって影響されることが予測される。ここでは西日本の主要な造林樹種であるヒノキを対象として、ノウサギの生息に間伐方法がどのように影響するかを検討した。

調査地をクマタカの生息地である高知県いの町の31年生ヒノキ人工林に設定した。50m四方の試験区を12プロット設置し、50%定性間伐区、50%列状間伐区、35%定性間伐区、対照区(無間伐)を各3プロットとして、2008年5月に間伐を実施した。各プロット内に一辺2mの方形区を3区ずつ設定して、ノウサギの糞粒調査を間伐前の2007年8月と9月、および間伐後の2008年8月と9月に行うとともに、各方形区で下層植生の調査を行った。

その結果、ノウサギの糞粒は間伐前の2007年にはいずれのプロットでも確認されなかったが、間伐後の2008年には8月に6プロットでノウサギの糞粒が確認され、そのうち50%列状間伐区と35%定性間伐区の各2プロットで9月に糞粒が増加していた。2008年9月にはいずれのプロットでも下層植生の被度は間伐前に比べて大きく増加していなかった。これらの結果から、強度な間伐の実施に対して下層植生が反応するよりも、ノウサギの方が早く反応したものと考えられた。


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