| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-211

青森県十和田市に生息する絶滅危惧種シナイモツゴの現況と今後

長船裕紀(北里生物多様性ネットワーク)

シナイモツゴ(Pseudorasbora Pumila Pumila Miyadi)はかつて中部・関東地方以北の本州に分布する日本固有亜種で、平野部の浅い池沼に生息していた。しかし、人為的な他の淡水魚の移動に伴い、多くの地域でモツゴ(P.parva)に置換されていった。さらに脅威となったのは、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚の影響である。そして現在では多くの地域で絶滅した。近年では、シナイモツゴの保護や池沼の環境保全を目的に日干しなどによる外来魚の駆除が行われている。青森県において、シナイモツゴの生息が初めて報じられたのは1994年である。ただし、青森市を中心とする青森平野に限られていた。青森平野でのシナイモツゴの確認時、すでに当時環境庁において希少種となっていたこともあり、青森市の市民団体が中心となって保護に乗り出した。ところが、本県では90年代からオオクチバスの拡大が見られはじめ、ついに1999年に青森平野においてもシナイモツゴの生息する沼(又八沼)でオオクチバスが確認された。よって、翌2000年、青森市は水抜き行われオオクチバスが駆除された。その際、一時シナイモツゴの預かりを受けたのが、題目にある十和田市であり、その際に導入された某池にて、2009年現在も又八沼由来のシナイモツゴが、繁殖を繰り返し生息しているのである。

本調査では、シナイモツゴの生息を左右する大きな要因である、モツゴの移入、外来魚による捕食、生息池の水質や護岸整備などによる環境悪化の3点のうち、モツゴに焦点をあて、十和田市におけるシナイモツゴの分布拡大の可能性を調べるとともに、人為的生息のシナイモツゴの保護保全のあり方について考察した。


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