| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-215
地域の自然情報として環境庁により整備されてきた現存植生図は,地域レベルの都市計画などにはスケール・精度などの問題があり,あまり活用されていないのが実態である。また,生物生息空間という単位で自然の保全が図られてこなかったことも問題であると言われている。そこで本研究では,生物生息空間である緑地に関する地域レベルの環境情報(緑地カルテ)を住民参加によって調査・収集し,一つのビオトープタイプ地図として表示・共有する手順と方法を提案することを目的とした。
緑地カルテの様式作成に当たっては,住民参加で行いやすいように, (1)興味を持ちやすい対象生物を設定することや,(2)なるべく簡単な方法で調査できることに留意した。(1)の点では調査地に生息していることが確認されていたリス・アカネズミの食跡を探しながら緑地を調査するというように工夫した。緑地カルテの調査項目は以下の通りである。1)植物 (1)高木層の優占種(アカマツ・カラマツ・広葉樹・針葉樹から選択)・被覆割合,(2)高木層の幹周・樹高(3-6本),(3)低木層の被覆割合,(4)ササの高さ・被覆割合。2)動物 リス・アカネズミ食跡数。3)地形 水辺の有無。
調査対象地域は岩手県立大学周辺の岩手県滝沢村巣子地区とした。一回の調査緑地の単位はおおよそ2ha以下になるように分割した。調査は一緑地あたり1時間程度とした。住民・学生参加による調査を2008年10月から11月にかけて計5回実施した。この期間に並行して発表者らによる追加調査も行い,合計74の緑地に関する緑地カルテが作成された。
この緑地カルテを基に,高木層の優占種と低木層・ササの被覆割合を主指標にしてビオトープタイプを区分し,ビオトープタイプ地図を作成した。