| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-216

ネパールにおける人と動物の関係

*桜谷保之(近畿大・農・環境生態学),高橋あずみ(JICA)

ネパールは東西に細長い国であるが、高度差は8500mもあり、気候は亜熱帯から温帯を経て高山帯に至るかなり変化に富んだものになっている。こうした環境により、動物相も多様であるが、例えば、南部の亜熱帯地域にはサイやトラなどが生息していることは、日本ではあまり知られていない。また、ネパールは農業が主体で、現在でもウシなどが農耕に使われている。こうした状況から、ネパールにおける野生動物や家畜と人との関係をさぐり、今後の両者の関係のありかたについて考察を試みた。

調査は、(1)現地の農村地域におけるルートセンサスによる路上動物調査、(2)ネパールでのアンケートによる飼養動物、好きな動物、嫌いな動物等の調査、(3)南部のチトワン国立公園などでの現地調査、(4)日本の大学生のネパールに関するアンケート調査から構成した。

調査の結果、(1)の路上動物は、日本よりも圧倒的に多くの動物が見られ、特にイヌが多く、カモ、ニワトリ等の家禽類も多かったが、ネコは殆ど見られなかった。(2)の家畜はウシやヤギが多く、ペットはイヌが多かったが、ペットを飼っている家庭は多くないようであった。好きな動物は、イヌとウサギが上位を占め、嫌いな動物はトラとブタが上位を占めていた。(3)のチトワン国立公園では、野生のサイなどを観察できたが、ガイドは猛獣に対する対策は特に講じていないようであった。(4)の日本の大学生のネパールに関する認識は低く、また誤解も少なくないことがわかった。

以上のことから、現在のネパールは、日本の約50年前の動物との関係を保っている面が強いように思われ、あまり意識せずに野生動物や家畜などと接して、共生をはかっているように推察された。今後、こうした結果を基に人と動物の関係を再考したい。


日本生態学会