| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-217
近年、農業従事者の高齢化や減少が、ため池の維持管理機能の低下を引き起こし、その結果、構造が不安定になったため池は、集中豪雨や台風や地震で決壊することが多い。そこで、農業従事者でなく非農家も参加して地域ぐるみでため池を維持管理することによって、それらの決壊被害を未然に防止する減災社会づくりが重視され、農林水産省は、2004年3月に「ため池群広域防災機能増進モデル事業」を創設した。そこで、三重県は伊勢平野に位置する津市片田田中町において、地元自治会、地元小学校、県農林水産商工部、市農林水産部、財団法人水土里ネットみえで構成された協議会を設立し、当該事業片田田中地区(2004〜2008年度)を実施することになった。そこでは、「決壊防止計画(ため池監視体制の強化)」、「洪水調節機能発揮計画(洪水調節容量の確保)」、「水利用調整計画(渇水時の用水配分)」、「多面的機能発揮計画(親水空間整備や生態系保全の構想)」の4つの基本計画を柱に「ため池保全活動」を行っている。とくに、非農家にため池の役割について関心を集めるには、やすらぎ空間や自然環境を中心とした「多面的機能発揮計画」を策定する必要があるため、2004〜2005年度に、「植物」、「クモ類」、「昆虫類」、「魚類」、「両生類」、「は虫類」、「鳥類」、「地質」について、ため池と里山と水田で調査を行い、地域の自然についての資料を作成した。調査の結果、希少種をはじめとして数多くの動植物が確認されたことから、本地区には豊かな自然が残っていることがわかった。その一方で、ブルーギルやミシシッピアカミミガメなどの外来種の存在が明らかになった。ここでは、ため池や里山や農地を、自然豊かな環境を供給する地域の共有資産として、地域ぐるみで保全する意識が芽生えることを目指した「ため池保全活動」の事例について報告する。