| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-432

ケヤキにおける紅葉フェノロジーの産地間変異−国内分布域を網羅した産地試験の結果−

*矢野慶介,高橋誠,岩泉正和(森林総研林木育種センター)

ケヤキは主に冷温帯に生育する落葉広葉樹の一種であり、日本では青森県から鹿児島県北部にかけて天然分布している。ケヤキは木材資源として有用で、植林も行われていることから、遺伝子攪乱防止の観点などから地域間での遺伝的差異を明らかにすることは重要である。樹木の適応形質として、開葉や紅葉・落葉フェノロジーなどが挙げられるが、これらは樹木の物質生産期間に影響する重要な形質である。これまで、開葉フェノロジーについては多くの樹種で地理的変異の研究が行われているが、紅葉・落葉フェノロジーについては研究事例が少ない。筆者らはこれまでに、関東地方とその周辺地域13林分から収集されたケヤキ89クローンを対象に、3年間紅葉・落葉フェノロジーの調査を行ってきた。本研究では、さらに収集範囲を広げ、東北地方から九州までの国内分布域全体および韓国から収集されたケヤキを対象に、紅葉・落葉フェノロジーのクローン間および産地間での変異を明らかにすると同時に、産地の環境条件と紅葉・落葉フェノロジーの早晩性との関係を調べた。

調査には国内24林分から収集した133クローン、および韓国産の5クローンのケヤキを対象として、2008年8月下旬から11月下旬にかけて、ほぼ1週間ごとに紅葉・落葉フェノロジーを調査した。各個体の葉の色づき具合や落葉した葉の割合を観察し、紅葉や落葉の進行を指数評価した。

紅葉・落葉フェノロジーにはクローン間で有意な差が認められ、紅葉・落葉の進行には最大で約2ヶ月のクローン間差がみられた。また、全体的な傾向としては、日本海側から収集されたクローンの方が紅葉・落葉が早い傾向を示した。


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