| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-440
ツバメオモトはユリ科の林床生多年生草本で、繁殖様式は種子による有性繁殖を行う。交配様式は自家和合性を持ち、虫媒による他殖を行うことが確認されている。また種子発芽後の成長過程は、まず1枚葉で経年成長し、その後葉数および葉面積を増加させ、開花に至る長い栄養成長期間を持つことが明らかになっている。しかし、開花に至るまでの各生育段階における生存・死亡率、開花個体の開花周期や生産された種子の散布方法など、個体群の時空間的構造についてはまだ十分に把握されていない。
そこで本研究は、ツバメオモト個体群の空間構造、時間的動態を明らかにすることを目的として行った。野外調査は札幌市近郊の恵庭岳、手稲山、野幌森林公園の3ヶ所のツバメオモト自生地にて行った。
まず、各調査地において4m×4mの調査区を設置し、その中の全個体の位置と葉数を記録した。そして個体の集中度の指標となるL関数を用いて、個体の位置情報をもとに各個体群の空間構造に関する解析を行い、全個体・1枚葉段階・開花段階それぞれについて分布様式を解析した。またツバメオモトの成長過程の指標となる葉数を基準にサイズクラス区分を行い、その頻度分布によりサイズクラス構造を調査した。
その結果、まず空間構造に関しては、いずれの調査地でも1枚葉段階は強い集中分布を示し、生育段階の進んだ開花段階は、より弱い集中もしくはランダム分布を示した。また全個体における分布様式は、調査地ごとに異なった傾向を持つことが明らかとなった。次にサイズクラス構造に関しては、3調査地でそれぞれ違った構造を示した。これは各生育地の植生や土壌条件などの環境要因、ならびに集団サイズの違いに起因する、実生の死亡率や補充率などが異なっているためと考えられる。