| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-441
撹乱後の森林では、大きな個体の近隣に小さな個体が分布する局所的階層性の発達と、その後の小さな個体の枯死による個体分布の一様化が期待される。この空間構造の発達速度は、様々な偶発的要因により場所間でばらつくと予想される。本研究は、北八ヶ岳シラビソ・オオシラビソ縞枯れ林の複数の発達段階(林齢)の林分で、空間構造のばらつきを評価した。稚樹林(樹高約2m)、若齢林(約4m)、成熟林(約6m)にそれぞれ12調査区(稚樹林 25 m2, 若齢林 56.25 m2, 成熟林 100 m2)を2007年に設置し、調査区内の樹高20cm以上の全個体の位置と地際直径、樹高を測定した。全調査区にて、局所的階層性の発達を個体サイズの空間自己相関解析およびmark correlation関数で、個体分布パターンをpair correlation関数で解析した。
稚樹林の局所的階層性は、基本的に未発達だったが、12調査区中3区では発達が見られた。若齢林、成熟林では、調査区の大半で局所的階層性が発達していた。しかし、12調査区のうち、若齢林では1区、成熟林では2区で未発達だった。この結果は、森林発達に伴う局所的階層性の発達速度の場所間のばらつきを示唆する。個体分布パターンは、どの発達段階でも調査区間でばらついていた。また、発達段階に伴う個体分布の一様化という予想された傾向は見られなかった。これは、個体分布パターンの場所間でのばらつきが大きく、時間変化の検出が統計的に困難だったためだと考えられる。
以上で示した同齢の林分間で見られる空間構造のばらつきは、空間構造の変化要因である個体間競争の程度に場所間でばらつきがあった可能性を示唆する。