| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-446
台風撹乱後の上層群落の回復プロセスをモデル化するために本研究は、回復反応の種間差を整理しそれに影響を及ぼす主要因を明らかにすることを目的とした。まず、宮崎県綾町の照葉樹林で1993年に発生した強い台風撹乱後8年間の成木サイズクラス(胸高直径5cm以上)への進級割合(進級数/撹乱前の成木クラスの幹本数)を主要樹種17種の種間で比較した。つぎに進級割合の種間差に影響する要因として、稚樹サイズクラス(胸高直径5cm未満、高さ2m以上)の量的要因と成長要因とのふたつを比較解析した。稚樹の量的要因として稚樹本数割合(撹乱直後の稚樹本数/撹乱前の成木本数)を、成長要因として撹乱後の稚樹の相対直径成長率の平均値を指標として用いた。撹乱後8年間の成木サイズクラスへの進級割合は種間で有意に差がみられた。全種込みの値よりもスダジイ、ヤブニッケイなどが有意に大きく、イスノキ、カシ類、サカキなどが有意に小さかった。攪乱直後の稚樹本数割合は全種込みの値よりもホソバタブ、イヌガシ、ヤブニッケイなどで有意に大きく、イスノキ、カシ類、サカキなどが有意に小さかった。撹乱後の稚樹の相対直径成長率はユズリハ、トキワガキ、ヤブニッケイなどが大きく、ヤマビワ、アカガシ、ヤブツバキなどが小さかった。以上の結果から、撹乱後の森林の上層群落回復反応は次世代を担う稚樹群の撹乱後の成長要因よりも量的要因が大きく効いていることが示唆された。つまり撹乱後の回復は、成長反応のような種特性よりも撹乱直後にどれだけ稚樹バンクが形成されていたかという偶然性にも大きく影響を受けることを意味する。