| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-450

本州東部におけるチシマザサの潜在分布域の予測と気候変化の影響評価

*津山幾太郎(森林総研),松井哲哉(森林総研・北海道),小川みふゆ(森林総研),小南裕志(森林総研・関西),田中信行(森林総研)

本州東部におけるチシマザサ(Sasa kurilensis)の分布を規定する気候変数とその閾値を明らかにし,気候変化がチシマザサの分布に与える影響を評価するため,チシマザサの分布確率を気候データから予測する分類樹モデルを構築し,現在と2081-2100年の潜在分布域を予測した.

説明変数は,植物の分布に重要と思われる暖かさの指数(WI),最寒月の日最低気温の平均(TMC),最大積雪水量(MSW),夏期降水量(PRS),冬期降雨量(WR)とし,現在の気候には旧メッシュ気候値を,将来の気候には気候統一シナリオ第2版を用いた.目的変数には,植物社会学ルルベデータベースから抽出したチシマザサの分布の有無データを用いた.モデルの精度検証には,ROC解析を用いた.また,ROC解析から予測精度が最高となる分布確率を求め,これを閾値として,潜在分布域を「分布適域」(生育に適する地域)と「分布辺縁域」(生育は可能だがあまり適さない地域)に区分して予測した.

分類樹モデルによるチシマザサの分布と気候データの関係の解析の結果,本州東部における各気候変数の分布規定要因としての重要度は,MSWが最も大きく,以下,WI,PRS,WR,TMCの順であった.また,チシマザサは,MSW≧97.7mmを満たす環境で分布可能で,分布適域はMSW≧215.6mm,かつWI≧30.7℃・月を満たす気候条件に限定されることが明らかになった.チシマザサの2081〜2100年における分布適域と分布辺縁域の面積は,MSWの減少とWIの増加により,低標高域を中心に縮小し,それぞれ現在の21.7%と67.1%に減少すると予測された.


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