| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-452

輪作水田における雑草動態モデル:変動環境での個体群動態と埋土種子の持続性

*浅井元朗(中央農研), 秋田鉄也,松田裕之(横浜国大・環境情報)

日本の水田の多くで近年,ダイズ等の畑作物が周期的に輪換栽培されている。水稲-ダイズ-ムギ類の2年3作あるいは水稲-水稲-ダイズの3年3作体系が典型的であり,畑作物を数年間固定して連作する体系も一部ある。従来,水田―畑作の輪換は耕種的雑草防除の代表例とされてきたが,現実には栽培体系ごとに異なった雑草種が増加あるいは減少する実態が現場で広く認識されている。しかし,これに対する数理的な解析は乏しく,輪作の栽培体系と防除圧が雑草の個体群動態に与える影響は不明確である。

水田連作,畑連作および典型的な輪作条件下で雑草個体群の増殖率について,耕起等による種子の土中垂直分布変化,畑条件,水田条件におけるシードバンクの死滅率,生残した成熟個体による種子生産数などの生態的・耕種的パラメータを組み合わせた個体群動態モデルを構築した。畑地の雑草種は畑期間のみ,水田の雑草種は水稲期間のみ繁殖し,作物栽培前に出芽した雑草幼植物はすべて死滅し,作物栽培期間中の防除圧を0.99×0.80と仮定し,防除を免れて生残した雑草個体がその出芽時期に応じた種子生産をおこなうという前提で,埋土種子数および成熟個体数の経年変化を試算した。

畑条件,水田条件におけるシードバンクの死滅率をさまざまに変化させたシミュレーションの結果,水田条件あるいは畑条件における埋土種子の死滅率が増加率に対する寄与がきわめて高いことが判明した。シードバンクの持続性に関するパラメータ値と典型的な輪作体系における年平均増加率との関係を推定した。本モデルは輪作体系と防除圧,雑草の生態的特性との関係を定量的に記述し,管理方策を提言する有効なツールとなる。


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