| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-459

ブナ粗大枯死材の分解に関わる菌類群集の動態と機能

深澤遊(トトロのふるさと財団)

冷温帯の優占樹種であるブナの粗大枯死材の分解過程を菌類群集の分解機能から説明することを目的として、野外における枯死材の分解過程と菌類遷移の記述および室内実験による各菌類の材分解力の評価を行った。調査は、京都府北部のブナ天然林にて行った。調査対象としたブナ枯死材は合計113本、直径は13cmから73cmの範囲にある。はじめに、ブナ枯死材の分解段階に沿った材の密度、含水率、有機物組成、窒素量の変化パターンを明らかにした。次に、材有機物の機能的な分解者と考えられている担子菌や子嚢菌(大型菌類)および、比較的材分解力は弱く材の機能的な分解者とは考えられていないが、材に軟腐朽を引き起こすことがある不完全世代の菌類や接合菌(微小菌類)の発生パターンをブナ枯死材の分解段階に沿って明らかにし、材の物理化学性との対応関係を明らかにした。さらに、ブナ枯死材に発生した菌類の分離菌株を用いて、純粋培養下における材分解試験を行った。

以上の結果から、ブナ粗大枯死材の分解過程はリグニン・ホロセルロース同時分解の期間と、それに続くホロセルロース選択分解の期間に分けられ、白色腐朽性の大型菌類と軟腐朽性の微小菌類がそれぞれの期間における重要な材分解者であると結論した。これら材分解力の異なる菌類が定着することによる材の腐朽型の違いが土壌腐植蓄積におよぼす影響についても考察する。


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