| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-461
河川水と海水とが混合する汽水域においては、様々な有機物が多量に供給され、有機物の無機化の場として大きな役割を果たしている。汽水域に供給された有機物は底土のごく表層において好気的に分解されるが、その下層では嫌気的に分解される。汽水域では硫酸イオンが豊富に存在するため、底土中の嫌気的有機物分解は主に硫酸還元細菌(SRB)による硫酸還元によって進行する。上層水中塩分が変動し多様な有機物が供給される汽水域において、SRB群集構造はそれらの環境因子によって変化する可能性が考えられる。そこで本研究では、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(PCR-DGGE)法を用いて汽水性潟湖の底土中におけるSRB群集構造を明らかにし、更に、底土を用いて作製したマイクロコズムを使ってSRB群集構造と環境要因の関係を実験的に明らかにすることを目的とした。調査は宮城県仙台市近郊の2つの汽水性潟湖、蒲生潟と井土浦において、環境因子とともにSRB群集構造の解析を行った。SRB群集構造は土壌より抽出した鋳型DNAを用いてPCR-DGGE法により決定した。2つの潟湖において、環境因子の変動に伴ったSRB群集構造の空間的変動が見られた。野外調査の結果から、SRB群集構造はその場所の上層水中の塩分や供給される有機物の種類によって規定されていると予想されたことから、上層水中塩分や供給される有機物の種類を変化させたマイクロコズムを作製し、SRB群集構造を比較した。その結果、上層水中塩分の異なる処理区間、更に、異なる種類の有機物添加処理区間において明確な差異が見られた。以上のことから、本研究を行った汽水性潟湖においては上層水中塩分や供給される有機物の種類が、底土中のSRB群集構造を決定する要因として重要であることが考えられる。