| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-466
マツタケの子実体や菌根の分布については、記載的な研究が行われてきているが、地下部の菌根の定量的な研究は、私達の知る限りではこれまでにない。2007年11月末から12月にかけて、京都府林業試験場の坂井研究林の3つのマツタケのシロから、マツタケ子実体の発生した位置の直下及び、そこから5 cmの間隔を空けてシロの内側方向に3カ所と外側方向に2カ所ずつ、計6カ所でシロの外周を横断するようにサンプルを取った(サンプルの端から端までの長さは70 cm)。ただし、最も外側のサンプルでマツタケの菌根がかなり見られた場合には、さらに外側に1カ所サンプルを採取した。各シロについて、2つの子実体を選び、2系列の土壌サンプルを採取した。土壌サンプルは10x10 cmで深さ30 cmまで、表層から20 cmまでは5 cmの厚さに分けて採取し、20-30 cmは1つのサンプルとして採取した。それぞれの土壌に含まれるマツタケの菌根を実体顕微鏡下で採取し、乾燥後定量した。
マツタケの菌根の分布はマツタケ子実体の発生位置直下または、すぐ内側、またはすぐ外側のサンプル(いわゆる活性菌根帯)で非常に多くなっており、それより内側でも外側でも菌根量は急激に減少した。ただし、子実体発生地から40cm内側のサンプルでもある程度のマツタケの菌根が見られる場合があった。マツタケの菌根が多い場所では、マツタケの菌根の割合は71-94%と非常に高くなっていたが、シロの最外側のマツタケ菌根の割合は1割以下と他の菌根が多かった。これに対し、シロの最内側のサンプルではマツタケの菌根の割合が4割程度と大きかったが、これは、シロの内側では菌根量自体が少ないためである。土壌を採取したすぐそばから2008年秋には子実体の発生が確認され、シロには大きなダメージは与えていないと考えられた。