| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-467
植物根に共生するアーバスキュラー菌根菌(以下、AM菌)が植物へリン酸を供給し、植物の生育を改善することはよく知られている。またAM菌はリン酸だけでなく、土壌から吸収した無機態窒素を植物へ供給することも、多くの研究で確かめられている。しかし、土壌中での無機態窒素の移動速度は速いため、AM菌による窒素供給によって植物生育は影響を受けないと考えられてきた。今回、土壌中での無機態窒素の移動が制限された条件で、植物の生育がAM菌による窒素供給によって改善されることを初めて見いだしたので、ここに報告する。Tanaka & Yano(2005)が開発した根箱を改良し、菌糸を通すが根を通さないナイロンシートで片面を覆った根コンパートメント(RC)、同様に片面を不織布で覆った菌糸コンパートメント(HC)、そして両コンパートメントの間にワイヤーネットを挟んで2mmの間隙を設けた装置を作成した。それぞれのコンパートメントには川砂を充填し、RCに長ネギ幼植物を移植し、AM菌(Glomus sp. R10、出光興産)を接種した。AM菌菌糸はワイヤーネットの間隙を越えて伸長するが、水分は間隙を越えて移動しない。重窒素標識したNH 4NO 3を用い、両コンパートメントに無添加(無N区)、両側に窒素添加(両N区)、RCのみに窒素添加(RN区)、HCのみに窒素添加(HC区)の各処理を設けて栽培を行った。3週間後に解体し、植物生育量、窒素・リン含有率等を分析した。HCへの窒素添加は有意に植物全乾物重を増加させ、また、植物の重窒素吸収量は無N区に比べRN区で上昇した。これらのことは、AM菌がHC中の窒素を吸収し植物へ供給することによって植物の生育量を増加させたことを示すものである。