| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-503
近年、人間活動による地球温暖化が社会的な問題になっている。地表温度の上昇により、降水量の空間的及び時間的な規模での分布パターンの変化、海面上昇、エルニーニョ現象等の問題、さらに、物理的、生物的、社会経済的な問題にも発展している.
生物的な影響の一つに、温暖化の速度に生物の移動速度が追いつかないことがあげられる。生物は、最適な環境の下で繁殖をするために移動を繰り返してきた。しかし、近年、土木工事などの人間の活動によって、生息地の分断化は顕著なものになっている。植物の生息域及び移動を妨げられてきている。生物は生育環境が最適域から外れると、個体のストレスが大きくなり繁殖できなくなる。これらの種では温暖化の影響を受けやすく、そして、個体群の生存可能な限度を超えると絶滅に至る.
そこで本研究では、高い遺伝的多様性を持っている岐阜県恵那市のシデコブシを研究対象とし、種子散布による植物の移動・分散が、高速道路や道路・鉄道・河川といったインフラ設備によって、どれくらい分断化されているのかをシミュレーションすることにした。分断化とは、大きな連続した生息域が減少し、細分化し、またさらに2つあるいはそれ以上の断片に分断される過程をいう。分断化によって、移動と分散の阻害、個体群の適応能力の低下を及ぼし絶滅速度を速めてしまう。さらに、インフラ設備の影響を考慮するとともに、温暖化による生息域の変化も考慮した。また、近年、国土交通省が推進する道路事業における環境保全への取り組みである「エコロード」に注目が集まっている。このエコロードの影響を、インフラ設備に透過率という形で考慮することで、エコロードの効果が実際に、植物の移動・分散にどれほど効果があるのかを確かめた。