| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-516

ヒルムシロ属における高温ストレス応答〜熱ショック転写因子hsfが高温馴化能を決めるのか?〜

*天野百々江(神戸大・院・理),飯田聡子(神戸大・内海域),小菅桂子(神戸大・遺セ)

陸上に比べて水中は温度変化が緩やかである.したがって完全に沈水性の種は,水中でも陸上でも生育可能な種に比べて温度に対する馴化の能力が低いのではないかと考えられる.これまで,ヒルムシロ属で生育型可塑性を持つササバモと沈水性のヒロハノエビモを用いて高温応答の研究を行ってきた.馴化条件で栽培したササバモは,致死温度が向上すること,高温に応答して発現する熱ショックタンパク質などの量が低下することが明らかとなった.一方,ヒロハノエビモではそのような馴化による違いは見られなかった.

熱ショック転写因子(HSF)は熱ショックタンパク質などのストレス応答性遺伝子の発現を制御し,なかでもHsfA2は高温馴化に必須と言われている.本研究では,ササバモとヒロハノエビモにおいてこの遺伝子の解析を行った.HsfA2は2種類存在し,それぞれをHsfA2aとHsfA2bと名付け,2つの遺伝子の構造を両種間で比較するとともに,RT-PCRで熱処理時における発現誘導を調べた.HsfA2aはプロモーター部分も含めて構造が類似しており,熱処理により両種ともで発現が誘導された.一方,HsfA2bは両種間でプロモーターの構造が大きく異なり,ササバモでは熱処理により発現が誘導されたが,ヒロハノエビモでは誘導されなかった.シロイヌナズナではHsfA2は1種類で,高温応答と高温馴化の両方に機能している.しかし,ヒルムシロ属では遺伝子重複により2種類になり,それぞれHsfA2aが高温応答とHsfA2b高温馴化に機能分化している可能性が考えられる.


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