| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-519

マイクロサテライトマーカーを用いたミョウガガイの矮雄間競争の解明

*尾崎有紀(奈良女子大・院・人間文化),岩口伸一,遊佐陽一(奈良女子大・理)

配偶相手である雌や雌雄同体よりも著しく小さな雄(矮雄)は,チョウチンアンコウ類や一部のクモ類,フジツボ類などで知られている。矮雄は,小さな雄の適応度が大きな雄や雌雄同体と同等以上であるときに進化すると考えられている。実際,尖胸類やクモ類などで,小さな雄が授精に有利であることを雄の着生位置などから推測した研究例はあるが,個々の雄の授精成功を遺伝学的に評価した研究はない。

深海に低密度で棲息するフジツボ類の一種であるミョウガガイScalpellum stearnsii(甲殻綱:ミョウガガイ科)では,これまでに1個体の雌に0から35個体(平均6個体)の矮雄が着生しており,授精部位付近に多くの雄が着生していることが示唆されている。また,雌の体サイズが大きいほど産卵数が多いが,矮雄の平均の大きさ(体積)は小さくなっていた。これらのことは,矮雄間に授精競争が存在することと,小さな雄個体が高い授精成功度を収めていることを示唆する。

そこで,本研究では,マイクロサテライトマーカーを用いて,個々の雄の授精成功について解析した。サンプルは,鹿児島県野間池沖で採集したミョウガガイを使用した。独自に開発した複数のマイクロサテライトマーカーを使用して,雌・矮雄・子の遺伝子型を決定した。今回は,その結果をもとに,矮雄の大きさや着生位置と授精成功率との関係について報告する。


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