| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-520
生殖活動は一日の限られた時刻に起こり、集団間でこのタイミングがずれると生殖隔離が生じる。ミバエ類はある決まった時間帯にのみ交尾をするが、この交尾時刻に著しい種間変異があることが知られている。ミバエ類に属するウリミバエでは、大きな母集団からの人為選択によって交尾時刻の異なる2系統が得られている。私たちはこれらの系統間の時間的形質の差異は、時計遺伝子の一部の違いよって生み出されているという仮説の下、種内における時間的形質の多型が起こる機構の解明を目指して研究している。現在、ウリミバエのこれら2系統間でのいくつかの時計遺伝子の配列解析が進行中であるが、ウリミバエの分子時計本体の構造が分かっていない。そこでウリミバエ分子時計の機構を、分子時計モデルの解明が進んでいるショウジョウバエと比較するため、分子時計を構成する生物間で共通な時計遺伝子per, clk, cyc, cryに着目し、これらについてウリミバエを用いて解析した。それらの遺伝子のmRNAの発現パターンと分子系統を解析した結果、ウリミバエとショウジョウバエとはその時計遺伝子群の振る舞いや配列には大きな違いは見られなかった。このことから、ウリミバエとショウジョウバエでは時計機構が比較的似ていると考えられ、ショウジョウバエのモデルを参照して、系統間の違いを生み出す時計遺伝子の探索を行うという従来の方法には妥当性があると思われた。次に、mRNAレベルで発現振幅が見られる時計遺伝子について、系統間で発現パターンに違いがあるのか調べた。その結果、光入力に関わる時計遺伝子cry(cryptochrome)において発現パターンに違いが見られた。これらを踏まえ、ウリミバエ分子時計の系統間の差異を担う原因遺伝子をつきとめるために遺伝子機能を抑制するRNA干渉法の適用可能性を本種で検討したので、その結果についても報告する。