| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-522
里地里山種は人間による環境の改変にともなって日本列島内で分布域を広げたと考えられている。このため極相林の種などと比べて遺伝的変異の地理分布パターンが異なっている可能性がある。この研究では里山や極相林の生物についての既発表の研究データを用いて遺伝的な種内変異の地理分布の予備的な解析を行った。
まず種内変異の分布の境界となっていることが多い境界線(本州や四国の日本海側と太平洋側の背腹線、氷上回廊や糸魚川・静岡構造線などの南北線6本、北海道など)で全国を20地域に分け、それぞれの地域での種内変異を表にした。次に各地域の組み合わせでの種内変異の異同をもとに地域間の類似度行列を求めた。これから種間の類似度行列を求め、クラスター分析と多次元尺度構成法によって類似した地理変異パターンを持つ種群を求めた。
大きく3つのクラスターに分かれたが、ひとつはスダジイ、コバノカナワラビ、コショウノキなどの照葉樹林の種群であり、もうひとつはヒメボタル、ニホンザル、ハナミョウガなどのグループである。3つめのクラスターは、ヘイケボタル、ゲンジボタル、メダカ、ホトケドジョウ、ニホンアカガエル、コナラなどからなり里地里山種が多いが、ブナも入っていた。今後は各グループを比較することにより、極相種に対する里山種の歴史的な分布拡大パターンの違いを明らかにしたいと考えている。現時点ではデータが限られているため、典型的な里山種などで実際に種内変異も調査する予定である。