| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-527
地球上に生きる生物は常に環境によるストレスにさらされている.紫外線、気温、捕食者、疫病など様々な要因が挙げられるがそれら個別の要因が生活史に与える影響は時間と共に変動する.環境ストレスのこれらの事例はその時の個体群の変動や生態系の構成に大きなリスクを与えるため、生物個体は免疫系や毛皮、擬態などを発達させるコストを支払うことでそのリスクの軽減をしている.しかし、変動の不確実性により完全なリスクの回避や将来の個体群の正確な予測などを行うことは困難である事が一般的である.
この環境変動は個体群の決定論による動態にランダムな変動の効果が加わるとする見方を採れば数学的に表現が可能でこれまでランダムな影響は適応度を下げることが知られている.同様の変動の効果に関して経済学、特に金融工学で多くの研究がなされて来た.金融工学では生物の個体群の増加の代わりに株価が固定利率で増加する一方、市場取引の動向による不確実性で株価が変動すると仮定された場合の将来の変動に対する利益価格を評価するオプション理論と呼ばれる数理理論がある.
本研究では、ブラウン運動の効果を個体群の増殖に導入した個体群動態を、伊藤の確率過程として捉えなおす事で、コロモゴロフ後退方程式(以下)を用いる.
ut=aux+b2/2uxx
u(x,0)=x
この方程式を用いて、個体群増殖がマルサス方程式である場合とロジスティック方程式である場合について解析を行った.
dx=a(x,t)dt+b(x,t)dβt
a1=rx1,b1=σx1
a2=rx2(1-x2/K),b2=σx2
この解析では、環境におけるコストを個体数xと時間tの関数として次式で定義し、
cost(x,t)=1-uσ/u0
二つのランダムな環境の方程式とそれが存在しない環境での方程式の解からコストの違いを解析した結果を報告する.