| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-529
モンゴルでは、定住せずに家畜とともに移動しながら広範囲の植生を利用する牧畜形態、すなわち遊牧が盛んに行われている。家畜の摂食によって植物群落は地上部バイオマスの減少や種構成の変化などの影響を受ける。また逆に遊牧の移動パターンは植物バイオマス量や分布パターンによって影響を受けている。このため、モンゴルでは遊牧を介して人間活動と植物生態系の間に相互作用が働いており、これらの理解は人間活動下における生態系の挙動を知る上で重要である。
モンゴルでは2002年に土地法が改正、土地私有化法が制定され、居住地と農耕地について制限つきの私有化が認められた。このことは将来的に遊牧民の定住化を促進すると予測されている。遊牧から定住による牧畜へと人間活動が変化することで、モンゴルの植物生態系はどのような影響を受けるだろうか。本研究ではモンゴル国hovd県を対象に、植生モデルと遊牧民の植生利用モデルを構築し、遊牧範囲の縮小が植生と遊牧民の獲得利益の双方に与える影響を予測した。
hovd県中部の山岳地帯に50km×25kmの調査区を設定し、2001年から2003年の夏季(6月〜10月)をモデル対象とした。植生モデルは地球観測衛星のMODISセンサから得た調査区のバイオマスデータをもとに変化式を得た。遊牧民の植生利用モデルは遊牧民の聞き取りによる移動経路と所有家畜数をもとにモデル化した。これらをもとに遊牧民の移動距離が現在見られるものよりも減少した場合のバイオマス量の変化と遊牧民の得られる利益の変化についてシミュレーションを行い、その結果を発表する。