| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-534

琵琶湖からの導入による関東河川における淡水魚地理系統の混在 −オイカワとウグイの比較−

*高村健二,中原真裕子(国立環境研・生物)

淡水魚オイカワZacco platypus は関東および北陸地方以西の主として河川に自然分布していたと言われているが、近年琵琶湖産アユ放流が盛んになるにつれて、琵琶湖産系統の分布が全国的に拡大された。関東地方河川においても1950年代前後からアユ放流が活発となりその頃から琵琶湖産系統オイカワが定着したと考えられる。

実際に関東地方河川で採集されるオイカワのmtDNA cytochrome-b塩基配列を調べたところ、塩基置換率の違いが1%に近い2つのハプロタイプ群が見つかった。それらを琵琶湖産オイカワの塩基配列と比較した結果、1群が琵琶湖に由来している、つまり琵琶湖産と関東産の系統が関東地方河川で混在していることが確認された。

その後、両系統の繁殖隔離の有無を調べるために、当年生まれの仔魚における各系統の出現率季節変化を5月〜9月の間、栃木県の那珂川・鬼怒川で調べた。その結果、出現率にはっきりとした季節変化は認められず、仮に繁殖隔離があるとしても季節的ではないと推察された。

一方、調査河川ではウグイTribolodon hakonensisにおいても琵琶湖由来の系統が分布している可能性があるため、出現ハプロタイプと琵琶湖産ウグイのそれとを比較したところ、琵琶湖系統の混在が示唆された。さらに、ウグイとオイカワとの間で両系統の出現頻度に違いがあるかどうかを検討する。


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