| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-550
社会性昆虫において、同じコロニーの仲間を認識する機構は、社会性維持のために必要不可欠である。巣仲間認識は、主に体表炭化水素由来の臭いを指標にして行われ、その臭いは遺伝や環境、あるいはその両方によって決められていることが知られている。多回交尾を行う種や、多女王性の種では、一回交尾・単女王性の種に比べて巣内の遺伝的多様性が高く、ワーカーの臭いが混合され、巣仲間認識が曖昧になると考えられる。
本研究では、単女王性・多回交尾種であるシダクロスズメバチにおいて、巣仲間認識に遺伝および環境由来の臭いが関与しているのか検討した。野外から巣を採集し、巣盤1枚と同巣のワーカー50個体を飼育箱に設置し、これを受入コロニーとした。そこへ自巣もしくは他巣のワーカーを1個体ずつ導入し、受入コロニーの反応を観察した。導入するワーカーは環境由来の臭いを排除するため、羽化後母巣から隔離し、羽化後0時間から72時間の間で6時間ごとのグループに分けて導入した。その結果、自巣か他巣かに関わらず、導入ワーカーは羽化後の時間の経過に従って、受入コロニーに拒否される割合が高くなることが分かった。さらに、グループごとに自巣と他巣のワーカーの体表炭化水素物質についても化学分析を行い、受入コロニーに高い頻度で拒否されるグループと受け入れられるグループの間で、体表炭化水素物質に違いがあるのかについても検討する。