| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-551
社会性膜翅目昆虫の最大の特徴として、ワーカーが羽化後も母巣にとどまり血縁者である姉妹や兄弟の養育を行なうことが挙げられる。ワーカーは自らの繁殖機会・生存を犠牲にして巣に貢献する。このような利他的な行動の進化は、血縁者の繁殖を助けることで血縁者を介しその行動を発現する遺伝子を集団中に広める、という血縁選択理論によって説明がなされてきた。ほとんどの社会性膜翅目昆虫のワーカーが、生涯母巣を離れずに巣に貢献するのは、自ら繁殖するより血縁者の繁殖を助けたほうが包括適応度を上昇させることができるからであると考えられる。
しかし、単女王制・一回交尾の種であり巣内の姉妹間血縁度が高いフタモンアシナガバチにおいて、他巣に移動し居着くワーカーが存在する。母巣に留まらず他巣に移動するワーカーの戦略として、他巣での産卵やオスとの交尾などが考えられるが、実際にこの居候ワーカーが他巣で何をしているのか、包括適応度の上昇に関係する要因がなんであるのかは全くわかっていなかった。
今回の研究では野外におけるフタモンアシナガバチの巣をビデオ観察し、他巣に移動したワーカーがどのような行動を行なっているのかを、産卵、順位行動や外役行動を中心に調べた。今後、ワーカーが移動した先の巣と母巣との間にどのような違いが見られるのかも調べる予定である。