| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-560
繁殖期における形態特性は、繁殖場所の物理的環境、成熟個体の密度など生物的・非生物的要因が強く影響し、長い時間の中で獲得した形質であると考えられる。本研究では、サクラマスを用いて繁殖形質を個体群間で比較し、生物的・非生物的要因が繁殖形質に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
調査は、北海道中西部に位置する厚田川にて行った。本河川は、過去に放流された経緯がなく、また魚類の移動を妨げる工作物がないため、人為的な影響が極めて低い河川である。厚田川にて成熟個体の密度および物理環境が異なる6支流を選び、2003年−2008年までの計6年間の繁殖期において、雄152個体、雌180個体の計332個体の外部形態の計測を行った。計測箇所は、頭長、上顎長、吻長、背鰭、脂鰭、尻鰭、尾鰭、胸鰭、腹鰭、尾柄高、体高の計11部位で行った。また、産卵前の雌に関しては、卵サイズ(g/10粒)の計測を行った。それらのデータを用いて共分散分析を行った結果、雌雄共に尻鰭、尾鰭で有意な差が認められた。また、卵重に関しては、残差を用いて分散分析を行った結果、尾鰭、尻鰭が大きい支流にて卵サイズが大きい傾向が認められた。これらの結果から、雌の繁殖形質に対して非生物的要因が影響し、支流ごとに異なる選択圧が働いていることが示唆された。一方で、雄では性的2型で顕著になる形質において、支流間で差が認められなかった。すなわち、支流間において選択圧が類似していると考えられた。