| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-563

競争者存在下におけるヨツボシモンシデムシの雄の繁殖行動

*岸田竜, 鈴木信彦(佐賀大・農)

モンシデムシ類は、小型脊椎動物の死体を幼虫の餌資源として利用し、両親が子の世話をする亜社会性昆虫である。繁殖の際、状況に応じて雌単独給餌、雄単独給餌、雌雄共同給餌、複数個体による共同繁殖などさまざまな繁殖様式を示し、繁殖における雄の役割についてもさまざまな報告があり、不明な点が多い。モンシデムシ類にとって他の昆虫、特にハエ類やアリ類は死体をめぐる重要な競争者であり、これらの競争者からの資源および幼虫や雌の防衛が雄のおもな役割であると考えられている。そこで、野外および室内実験により、ヨツボシモンシデムシの繁殖における競争者の影響を調べた。

野外に設置した鶏肉を経時的に調べることによって、ヨツボシモンシデムシとアリ類やハエ類の資源利用様式を解析した。その結果、ヨツボシモンシデムシとアリ類は資源を時間的に使い分けていて、直接の競争関係はみられなかったが、ハエ類は、ヨツボシモンシデムシにとって重要な競争者であることが示唆された。そこで、センチニクバエの3齢幼虫を競争者として導入した室内実験を行った。その結果、雌単独給餌と雌雄共同給餌の割合は、競争者が存在する場合と競争者が存在しない場合で違いはみられなかった。雌雄とも同様な防衛行動を示し、センチニクバエ幼虫を捕食して取り除く行動が観察された。しかし、競争者が存在する場合、分散幼虫数や分散幼虫のバイオマスはともに減少し、センチニクバエの成虫の羽化も確認された。したがって、ヨツボシモンシデムシはセンチニクバエの幼虫を完全に除去できないことが示唆された。

競争者が存在する場合にも雄が繁殖段階の初期に資源から退去する場合があることから、雄が資源に滞在し、雌雄協同給餌を行うか否かの決定には種間競争があまり影響していない可能性が示唆された。


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