| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-570
共食いは同種内の相互作用である。共食いの起こり方は同種内の直接的な相互作用により影響を受けるが、群集内の捕食者のような異種の存在によっても影響を受ける可能性がある。
エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は共食いをする。1回の共食いの成立過程は3段階に分けられる。それは、お互いが出会う・出会ったときに片方がもう一方を攻撃する・その攻撃が成功するというものである。頻繁に動き回るほどよく出会い、行動が大胆になるほど攻撃頻度も高くなる。サンショウウオは相手を頭から飲み込んで共食いするため、出会った個体同士のサイズ差が大きいほど攻撃あたりの成功確率は高くなる。私たちは、捕食者(ヤゴ)の存在によりサンショウウオの行動が抑えられ、また、行動が抑えられることで摂餌量の個体差もなくなり、大きな個体は出現せず、被食者同士のサイズ差は広がらないと予測した。そして、捕食者の存在により、共食いの起こり方が抑えられると予測した。
今回、ヤゴがいる場合といない場合でそれぞれサンショウウオ幼生を飼育し、各場合の行動観察、共食い数計測および形態計測を行った。結果、ヤゴのいる場合で共食いはほとんど起こらなかった。ヤゴがいない場合で共食いが起こり出した時点では、共食い成立までの3段階全てにおいてヤゴがいる場合で共食いが起こりにくい状態であった。しかし、一定期間たってからはヤゴのいる場合の方が行動は激しくなった。
ヤゴがいない場合で共食いが起こり出した時点では、共食い成立までの3段階全てが共食いの起こり方に影響していたが、一定期間たってからはヤゴのいる場合で攻撃あたりの成功率が低いことが、共食いの起こり方に影響していると考えた。捕食者の存在が、被食者の行動や形態を変化させ、被食者同士の共食いを抑制したことが示唆される。