| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-582
排泄行動は動物の生活に不可欠な行動であるにもかかわらず、その研究は採餌行動など他の行動に比べて少ない。排泄物は実際には、捕食-被食者間相互作用や、同種他個体への作用、病原体への感染などに関与していることから、排泄行動は多様な面からの選択を受け適応進化していると考えられる。オンブバッタAtractomorpha lataはフンを後脚でけり飛ばすという、排泄行動研究を進めるのに適した特徴的な行動をとる。まずこの行動の詳細を定量的に明らかにするため、けったフンの飛距離とフンを蹴る頻度を調べた。飛距離は成虫のみ調べ、頻度は個体別に若齢幼虫から成虫まで各齢について調べた。
フンの飛距離はオスで平均25cm、最長76cm、メスでは平均48cm、最長118cmだった。オンブバッタの体長はオスで約2cm、メスで約4cmであることから、オスメスともに体長の約10倍の距離までフンを飛ばしているといえる。フンの排泄時には、ける場合とけらずに排泄口からフンが分離する場合が観察され、ける場合には一回のけりでフンを飛ばす場合と、けっても排泄口に付着してとれない場合が観察された。フンをける割合(けった数/全排泄数)は平均すると74%だった。フンをける割合、けってもとれない割合(けってもとれない数/全てのけって排泄した数)、左右どちらでけるかには、いずれも雌雄間で違いはなく、調べた個体全体として左右どちらの脚でけるかに偏りはなかった。また、齢が上がるとともにフンをけってもとれない場合の割合が増加し、メスでは右脚でける割合が増加した。