| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-297
Janzen-Connell仮説は森林の種多様性の維持メカニズムを説明する重要な仮説である(Janzen 1970, Connell 1971)。この仮説は森林を構成する樹木において、種特異的な天敵(菌類や植食者)が親木からの距離や密度に依存して子個体を加害することで、親木付近に他種が更新するスペースができ、種の多様性が維持されるのではないかと推測している。近年、この仮説に関する研究は増加しているが、熱帯林と比べ温帯林での報告例は極めて少ない。さらに熱帯、温帯に関わらずほとんどの研究が種子や当年生実生を対象にしたものであり、当年生以降の生育段階ではこの仮説が引き続き有効なのかは不明である。
本研究では、落葉広葉樹8種を同種成木からの距離、播種密度を変えて播種した実験(1)、及び3樹種の各成木下にそれぞれ同じ3種の実生の播種を行った実験(2)の2つの実験を行った。実験(1)では発芽後5年間、実験(2)では3年間の実生の死亡過程を調べた。
実験(1)では当年生実生の時点では生存率に距離・密度依存的な効果が多くの樹種に見られたが、当年以降の生存率においては、同種成木下と他種成木下で差がなくなるものや同種成木下でより高くなるものも見られた。実験(2)では3年目までいずれの種の成木下でも同種実生の生存率が他種実生に対し低かった。実生の成長量には距離依存性は見られなかった。
これらの結果は、Janzen-Connell効果が発芽当年の実生に最も強く作用するが、実生の成長に伴い、次第にその効果が減少する種もあることを示している。何故減少するのか光や水分条件の影響も含めて解析した結果を報告する。