| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-308
モミは主に中間温帯林に分布する針葉樹である。自然状態では台風などで林冠が破壊されて光条件が好転し、林床の稚樹が生長して林冠層に達することで更新していると考えられてきた。よって、林冠木による被陰の程度がモミの稚樹の生長に大きく影響していると考えられる。しかし、被陰の程度とモミの生長パターンの関係は明らかとなっていない。また、Gapが形成されて光条件の好転した時点から稚樹が林冠層に達するまで何年かかるのかも明らかでない。日本の二次林は1960年前後から管理放棄されたものが多く、管理がなされていた時期と管理が放棄されてからでは森林内の光環境が激変していることが予想される。そのような森林内での林冠木による被陰とモミの生長パターンの関係を調べた。
まず、1976年と1996年の空中写真から目視判読によって植生変化を調べた。1974年から1996年にかけて落葉低木林の面積が減少し、落葉高木林の面積が増加していた。1960年代までは薪炭林として利用されていたため低木であった個体が、管理が放棄されてから高木になったと考えられた。
次に、直径5cm以上のモミのコアサンプルから年間肥大生長量および樹齢を調べた。また、直径と樹高の回帰式と年間肥大生長量から各年代の樹高を推定した。管理放棄される以前に定着した個体は樹高6〜7mを超えると生長が好転していたが、管理放棄以後に定着した個体は樹高6〜7mを超えても生長が好転していなかった。
以上のことから、二次林内に定着したモミの生長には人間による森林管理が強く影響していると考えられる。