| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-316
北海道中央部、苫小牧市のウトナイ湖では、湖面の周辺に広がるホザキシモツケやヨシ主体の湿生草原にハンノキ林の侵入が著しく、草原の縮小化や劣化が懸念されているが、ハンノキ林の侵入、成立過程の詳細は不明である。本報では成長錐を用いた年輪判読からその過程を明らかにし、その要因を考察する。
調査は、湖の北岸に長さ250m幅5mの帯状区を設け、地形断面測量と毎木調査を実施し、主要な個体から年輪サンプルを採取した。
地形は概して平坦で、内陸250mの始点から湖岸に向い海抜標高ほぼ4mの平坦地が10mほど続いたあとに約170m地点まで0.8mほど低下し、その後は約60m地点までほぼ同じで推移していた。50m地点で約3mに低下し、40mと30m地点間の砂丘で上昇した後に約2.4mの湖岸に達していた。
ハンノキは内陸側の約230m地点から出現し、湖岸近くまでほぼ連続して分布していた。より乾性な立地に生育するコナラ、シラカンバとドロノキは、始点から約230m地点の間と、約170mから160m地点の間に限って分布しており、後者の区域はバードサンクチュアリの遊歩道と一致している。
始点から約210m地点までの樹木の樹齢は、種にかかわらず80年前後であり、それ以降約170m地点までは、この区域を占有するハンノキの樹齢は約60年から40年へと減少していた。距離約165m前後に生育し、遊歩道の設置に反応して定着したと推察される樹齢30年から20年の個体を除けば、ここより湖岸側に生育するハンノキの樹齢もほぼ60年から40年の範囲に収まっていた。
以上より、ハンノキの定着は内陸側(230mから210m)で80年ほど前に始まり、その後は標高の低い場所ほど時期が遅れて約40年前まで継続した。その要因としては水位低下や富栄養化などの連続的に変化する要因が想定される。