| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-329

カツラマルカイガラムシ被害林の林分構造変化

*上野満,斉藤正一(山形森林セ)

カツラマルカイガラムシ(Comstockaspis macroporana TAKAGI.;以下カイガラムシ)が広葉樹林に大発生し,林木が衰弱枯死する被害が各地で報告されている。被害報告は、2008年までに山形県,福島県,長野県,新潟県で出されており,何れの県においても拡大傾向にある。山形県における被害は,2003年に山形市で5.92haが確認されて以来,2008年までに15市町,累計975.7haと全県下で確認された。

被害林に林接する健全林内に設置した調査区は,翌年にはカイガラムシが侵入しており,森林被害が拡大していることが確認された。被害林と健全林では約100mの距離があることから,被害は,年間100〜200m程度は進行することが確認された。

被害度は,いずれの調査区においても健全個体が減少する反面,全体葉枯,枯死の個体の割合が増えた。また,階層別の植被率は,いずれの調査区においてもコナラ,ミズナラ等で構成される高木層,亜高木層が低くなる一方,ハイイヌツゲ等から成る低木層,草本層の増加が見られた。被害林分は,面的な拡大とともに,時経的な変化も著しいことが確認された。

萌芽発生率は,全体葉枯の伐倒株で50%,部分葉枯の伐倒株で80%であった。被害初期の段階での被害木の処理が,その後の更新には有効であると考えられる。しかし,新たに発生した萌芽への再被害が見られることから,薬剤処理なども考慮した更新補助作業が必要であると考えられる。


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