| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-330
熱帯季節林の中でも,火入れなど人為の影響が強い落葉フタバガキ林を中心に,隣接する林分下の,表層を含めた地層中の植物珪酸体化石群から,現生群落内の母植物を対象にその変遷を明らかにすることを試みた.
調査地である,タイ東北部ナコンラチャシマ県サケラートの環境研究ステーションでは,落葉フタバガキ林(DDF),落葉混交林(MDF),乾燥常緑林(DEF)が隣接して分布する.それぞれの区域内で,表層から深度1m程度までの地層を観察し,約10cmごとの層準で植物珪酸体分析用の試料を,また放射性炭素年代測定用の炭化材を適宜採取した.
落葉フタバガキ林において2地点(SD1,SD2),落葉混交林で1地点(SM1)調査した.SD1の深度40cm,20cmより,1,157±20calBP,204±19calBPの放射性炭素年代がそれぞれ得られた.植物珪酸体化石では,現在生育するフタバガキ科が深度30cmの層準より上位で産出し,タケ類もほぼ同層位で多産した.また,SD2では深度50cm,40cmより,1,255±18calBP,1,447±22calBPの年代が得られた.それらの層準から上位でフタバガキ科が産出し,タケ類は表層で顕著に多かった.SM1では深度67cmより,炭化材年代4,390±22calBPが得られた.フタバガキ科は表層では見られず,それより下位の深さ43cmまで産出した.
以上より,現在分布する落葉フタバガキ林は,その地で約千数百年前に成立した.また,近年は乾燥常緑林が拡大しているが,落葉混交林では過去に落葉フタバガキ林が分布していた.