| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-677
樹木のバイオマス量は、樹径を独立変数にとった相対成長法によって間接的に推定される。成木を対象とした研究から、DBH2Hが幹枝量Cの回帰式の林分差を解消し、またShinozaki et al.(1964)の樹形のパイプモデルから、生枝下直径DBが葉量Fの回帰式の林分差を解消することが知られている。樹冠を上方にもつ成木ではDBの測定が困難なため、それほど一般的ではないが、若木ではDBが低位にあり、測定可能なDBHが少ない。落葉広葉樹の回帰式は、針葉樹の場合ほど高い精度にはならないが、樹形のやや異なる若木で、成木と同様の量的関係が成立するかどうかもまた定かではない。本研究では、岐阜県乗鞍岳西側斜面の二次遷移初期(11年目)の林分を構成する樹種のうち、4高木種と2低木種の若木を対象に、バイオマスの推定法の再検討を行った。
Shinozaki et al.(1964)および城田・作田(2003)を参考に解析を行ったところ、これらの若木でもパイプモデルが成立することが確かめられた。次に、樹種別・器官別・樹径別・次元別に回帰式を作成した。Cは地際直径DGL、FはDBもしくはDGLに高い相関を示したが、全地上部重Wは葉量によってDGLあるいはDBと高い相関を示した。DBHは相関が低く、全DBHを測定しても、測定樹径を制限しても、深刻な過小評価を起こした。これらの結果は、パイプモデルから解釈することが可能であった。さらに、樹径サイズの垂直分布を調べると、断面積とCがほぼ同調変化することがわかり、CとDGLの高い相関の背景には、力学的支持関係があると考えられた。パイプの実体を維管束系とする考えは多いが、シュート内の物質輸送のネットワークが針葉樹では通導機能、落葉樹では力学的支持機能に調節されている可能性が指摘されており、落葉広葉樹におけるパイプの実体の1つが力学的支持機構である可能性が示唆された。