| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-680

冷温帯カラマツ林における林床クマイザサ群落の炭素固定量

*酒井翔平,尾崎正紘(早稲田大・院・先進理工),小泉博(早稲田大・教育)

森林生態系の炭素循環において、林床植生の存在は極めて重要である。炭素循環研究のスーパーサイトとして知られている岐阜大学高山試験地のダケカンバ・ミズナラを主体とする落葉広葉樹林は、林床にクマイザサ群落をもち、これが生態系の炭素循環に重要な役割を果たしていることが明らかにされている。しかし、落葉針葉樹林の林床植生に関する研究はほとんど行われていない。そこで、ほぼ同じ林齢で林床にクマイザサ群落をもつ落葉針葉樹のカラマツ林を対象に、クマイザサ群落の構造と機能の研究を行った。本研究の目的は林床クマイザサ群落の炭素固定量を推定し、この群落がカラマツ林の炭素循環にどれだけ影響を与えているのかどうかを検討することである。

調査は2007年6月〜11月及び2008年5月〜11月に行なった。1m×1mの調査枠を毎月3か所設け、刈り取りと掘り取り調査により地上部および地下部の現存量を測定した。さらに器官別に仕分け、それぞれ当年生・旧年生・枯死別に測定した。これにより、月別の当年生器官の増加量を算出し、枯死量を加え純生産量を推定した。

その結果、2007年度(2007年6月〜2008年5月)のクマイザサの純生産量は3.3td.w.ha-1yr-1であることがわかった。また季節別に見ると、両年共に春と秋に純生産量は高い値を示していたが、夏の6月から8月にかけてその値は極めて低く、値がマイナスになる月も認められた。これは落葉広葉樹林(ダケカンバ・ミズナラ)における研究結果と同様であった。この傾向は林床の光環境の季節変化と良く対応していた。すなわち、林冠が開いている春と秋に生産量が高く、林冠の閉じた夏にその値が低くなっていた。さらに、これらの結果にクマイザサの呼吸量及びカラマツ林の純生産量を加え、カラマツ林全体の炭素固定量に対する林床植生の貢献度に関しても考察する。


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