| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-683
草原生態系は、先行研究によって炭素のシンク(吸収源)として機能していることが明らかになっているが、多くの炭素収支の推定にはCO2しか考慮されていない。しかし、草原生態系では、酸化的な土壌でのCH4酸化や植物体からのCH4放出などCH4としての炭素の流れがある。CH4はCO2に比べて約25倍もの高い温暖化ポテンシャルを持ち、温暖化に対して20%もの貢献度を持つことから、草原生態系の炭素収支においてもCH4フラックスを考慮する必要がある。そこで本研究は、茅場管理されているススキ草原において年間を通したCH4フラックスの定量的評価をすること、CH4フラックスを考慮した炭素収支を評価することを目的に行った。
その結果、生態系CH4フラックスは、季節変化に伴い増加する傾向が見られ、測定期間を通して夜間に比べ昼間に多くCH4が放出される傾向が見られた。しかし、季節変化と環境要因との関係性は低かった。また、シュート単位のフラックス測定から、酸化的な環境下にあるススキ(Miscanthus sinensis)からもCH4が放出されていることが明らかとなった。一方、土壌CH4フラックスは、積雪期や降雨後などはCH4を放出し、その他の期間はCH4を吸収するという季節変化を示した。これは、雪の下や降雨後などは、土壌が嫌気的になったことでCH4の生成が増加したことが原因と考えられる。土壌CH4酸化は地温と負の相関があった。しかし、土壌CH4酸化、土壌CH4放出の季節変化は、地温と土壌体積含水率による重回帰でもそれぞれ16%、30%しか説明できなかった。年間フラックスを概算すると、茅場ススキ草原はCH4のソース(放出源)として機能し、そのCH4放出は年間CO2吸収量の約3%を打ち消していることが明らかとなった。